進むも戻るもできない
そばに座って手を15分くらい握り続けていると、やっと目を合わせてくれ、怯えた表情が少し柔らぐ。
でも、夫婦2人でお店をやっているので、そんなに長く面会しているわけにはいかず、後ろ髪を引かれる思いで病院をあとにしているという。
「こんなところじゃ駄目になるばかりなので、退院して、家で看ようと思いましてね、主治医の先生に頼んだんですよ」
しかし主治医は、「口から食べられないような人に、退院許可は出せない」と言う。
「どうしたらいいでしょうね……」という電話なのです。
う一む、深刻な話です。
受話器のこちらで、私は考える。
自分だったらどうするだろうか、と。
誰か悩みを共有してくれる人を探して、相談するだろう。
誰かもっとTさんの身近に、悩みを共有してくれる人はいないでしょうか。